(ミラリィ)「ありがとう、ラブちゃん、フルアちゃん、スノー君。」
(ミール)「とっても美味しそうだね、」
みんなは木の実を食べてみました。
木の実の優しい甘さが口いっぱいに広がり、みんなの顔に笑顔が広がります。
(イオ)「ラブちゃんが言った通り、すごく甘くて美味しいよ。」
(ピピ)「もぎたての木の実をとった場所で食べるのって面白いな。」
ラブはみんなの中で、１番小さな手で木の実を持って、１番小さな口で木の実を食べています。
でも、ラブはとっても楽しそう。
その笑顔を見たみんなは言いました。
(ラブ)「ありがとう、フルアちゃん、スノー君。」
(フルア)「どんなことも、みんなでやれば楽しくなるわ。」
(スノー)「すごくいい香りがするよ。みんなで食べよう。」
ふわふわと葉っぱの隙間を飛び回りながら木の実をもぎとる姿は、まるでおばけさんのようです。
(イオ)「とっても元気で、優しいおばけさん達だね。」
イオの言葉に、ミラリィ、ミール､ピピもにっこりうなずきます。
ラブとフルアとスノーは木の実を大事に抱えてみんなの元に戻りました。
(ピピ)「ラブ､そんなに美味しい木の実なのか？」
(ラブ)「今、みんなの分もとるわ！」
ラブは手を伸ばして木の実をもぎとりますが、ラブの小さな手では、たくさんの木の実を持つことができません。
それを見たフルアとスノーはラブのところまで舞い上がって､一緒に木の実をもぎとりました。
(イオ)「ねぇ、あれって…！」
イオが隠れていた草むらの裏側には、木の実がなっている木がたくさんあります。
ナセキ島には、あちこちに食べられる木の実がたくさんなっています。
(ミラリィ)「どれも食べられる木の実ね。」
(ミール)「裏側においしいものがあるなんて…これが本当の「うらめしや」かな。」
ラブはふわっと舞い上がって、小さな手で木の実をもぎとると、小さな口で食べてみました。
(ラブ)「甘くておいしいわ！」
ラブの大きなピンクの瞳がキラキラ輝きました。
いつもちょっと控えめなイオが一生懸命おばけになりきっているのは、なんだか新鮮です。
(フルア)「びっくりしたけど、すごく面白いわ！」
(スノー)「イオ君、とっても上手におばけさんになりきれてるよ。」
(イオ)「面白かったなら、よかった。」
イオもにっこり笑いました。
ラブが言いました。
(ラブ)「「うらめしや〜」ってなあに？裏に何かご飯があるの？」
ラブは「うらめしや〜」という言葉の意味がよくわかりませんでした。
(イオ)「「うらめしや〜」っていうのはおばけさんが出てくる時の…あれっ？」
イオは何かに気づきました。
イオは、みんなを驚かす、でも心は痛めない、そう思って、一生懸命おばけさんになりきりました。
(ラブ・フルア・ミラリィ)「きゃあーっ！」
(ミール・ピピ・スノー)「うわっ！」
みんなはびっくり。
ラブ、フルア、スノーは大きな瞳をもっと大きくしています。
でも、すぐにみんな、明るい笑顔に変わりました。
(イオ)「おばけさんは…上手に隠れて…「うらめしや〜」って人を驚かせるんだよね。…それと、おばけさんは、驚かせた後、楽しそうに笑うんだ…」
おばけさんは、みんなを驚かすことはあるけれど、悪者ではない。
イオはそう心に留めて、ラブ達の元へ静かに近づきます。
ラブ達を驚かせない、ミラリィ達もドキドキ。
(ミラリィ)「イオはどんなふうに驚かせるかしら？」
(ミール)「うーん、どうだろう…？」
(ピピ)「俺たちもすごくドキドキしてきたな…。」
草むらに身を潜めたイオもドキドキしながら、
(イオ)「おばけさんみたいに…」
イオは自分の中の「おばけさん」を考えて、草むらから飛び出しました。
(ラブ)「イオ君は見つけられなかったわ。」
(フルア)「おばけさんみたいに驚かされちゃうわ。」
(スノー)「ドキドキしてきたな…」
一方､驚かす側のイオもドキドキしていました。
イオは太い幹を持った高い木がたくさんある､草陰のところに隠れていました。
イオも花の綿毛が全て飛んでいったのに気づいて、
(イオ)「驚かすのは僕か…昨日テレビで見たおばけさんはどんなふうに驚かせていたかな…」
イオは昨日の夜のおばけさんのテレビを思い出してみました。
(ラブ)「きゃっ！」
突然の風にラブ達は思わず目をつぶりました。
木の枝がザワザワと揺れ、葉っぱがひらひらと舞います。
風が止むと、ラブ達はそっと目を開きました。
(ラブ)「みんな、大丈夫？」
(フルア)「大丈夫よ。」
(ピピ)「全然平気だぜ。」
(ラブ)「よかったわ。」
その時、スノーが言いました。
(スノー)「あっ、もう探せる時間がない…」
風で花の綿毛が全て飛んでいっていました。
みんなを探せるのは花の綿毛が全て飛んでいくまでの時間。
それまでにみんなを見つけられなければ、見つからなかった人におばけさんみたいに驚かされちゃうのです。
先に見つけられたミラリィ、ミール、ピピも、イオがどこにいるかはわかりません。
(ミラリィ)「イオ､ 本当にどこに隠れているのかしら？」
(ミール)「もっと遠くにいっちゃったのかな？」
(ピピ)「姿も隠して、声も立てない…本当におばけさんみたいだな。」
ラブ達もおばけさんみたいにふわふわ飛び回ります。
(ラブ)「イオ君、すごく上手におばけさんになりきってる…」
その時、おばけさんが物の隙間をすり抜けるように、ひゅっと風が吹きました。
